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オーシャンアイズ AIで「漁師の勘」再現、持続可能な漁業へ
CASE:01
株式会社オーシャンアイズ

京都大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)発の技術ベンチャーである株式会社オーシャンアイズさまより、自社システム「漁場ナビ」のβテスト協力先としてFOIPをお選びいただきました。オーシャンアイズさまは、FOIPスタート時からご参加いただいているお取引先でもあります。今回、日本の漁業や自社のビジョン、FOIPをご利用いただいたご感想などについて、幅広くインタビューさせていただきました。

 

京大・JAMSTEC発技術ベンチャー リッチな情報で持続可能な海の利用目指す

オーシャンアイズの事業内容について教えてください。

株式会社オーシャンアイズは、京都大学・海洋研究開発機構(JAMSTEC)発の技術ベンチャー企業です。
機械学習によるパターン認識・海況シミュレーションなどの最先端の情報技術を活用し、持続可能な海の利用を目的に開発した自社システムをサービスとして提供しています。
オーシャンアイズのシステムの特徴は、水産業や海洋産業全体について、よりリッチな情報を提供することで効率化を図る点です。

 

従来のシステムにはない、多角的で豊富なデータを蓄積し、わかりやすいユーザーインターフェースに落とし込みます。
それを漁師など海洋産業の関係者に利用いただくことで、持続可能な海洋利用を実現することをビジョンとしています。

 

京都大学ではもともと漁業用のシステム開発を目指していたのですか?

京都大学の研究は、水産業のシステム開発からスタートしたわけではありません。
もともとは防犯カメラなどの画像解析技術などを専門としていました。

 

大きなターニングポイントとなったのは、約10年前、国立研究開発法人日本海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で、海洋気象の研究を行ったRECCAプロジェクトでした。
海洋気象の研究に、我々の画像解析技術を掛け合わせたのです。
ですから、研究の応用先として漁業や水産業には早くから注目していました。

 

 

「魚ではなく漁師のシミュレーション」、漁業を情報でサポート

オーシャンアイズの考える、日本の漁業の課題とは何でしょうか?

日本の漁業は、まだまだ経験と勘がものをいう世界だと思いますね。
しかし、漁業従事者の高齢化や後継者不足の問題があり、その技術が継承されないまま消えてしまう危機にあると思っています。

 

また世界の潮流として持続可能性はキーワードであり、SGDsを実現するにはこれまでの「獲れるだけ獲る」は、もはや不可能になっています。
海の恵みは有限だという意識をもたないといけないと思いますね。
漁業は、食糧供給源という面でも、食文化という面でも、持続可能なあり方で若い世代に引き継がれねばならない、日本の重要な産業の一つです。

 

我々オーシャンアイズは、この課題に対して京都大学やJAMSTECで培ったAIや海況シミュレーション技術を駆使して解決したいと考えています。

 

漁師の経験や勘をAIで代用できるのでしょうか?

通常、漁師たちは海面の表面温度分布図を見て「パターン」を探します。
「パターン」とは温度変化が激しいところ、渦を巻いているところなど魚がいそうなスポットです。
漁師特有の言葉では、「ハヤセ、シオメ、セ」などといいますが、これを見つけてあたりをつけるのです。魚群探知機を使うのは漁場についてからになります。

 

従来の水産学の研究では、魚が住むのに最適な温度など、生態学的なアプローチで漁場を推定していました。
これは、いわば漁業ではなく魚の生物学だったんです。
この魚は25℃くらいの海水温の場所によくいる、などという考え方です。

 

これに対して、私たちは魚ではなく漁師に注目しました。
経験豊富な漁師の方の漁場の選び方を伺っていくと、単なる点の温度ではなく、海水温を面のパターンとして捉えて漁場を決めていることがわかります。
オーシャンアイズも、画像解析の技術を用いて温度の分布図から面のパターンを抽出し、良く獲れそうな漁場を予測します。
つまり、漁業者の漁場決定を情報でサポートするのが我々のミッションです。
このように、「魚のシミュレーションではなく漁師のシミュレーション」によって、持続可能な漁業が実現できると考えています。

 

オーシャンアイズのシステムを使うことで、操業時の大きなコストである燃料費の約20%から30%の効率化が実現できると考えています。

 

オーシャンアイズの提供するシステムについて教えてください。

オーシャンアイズでは、海況予測システム 「SEAoME」(しおめ)と、漁業決定に必要な情報をリアルタイムに提供する「漁場ナビ」の2つのシステムをリリースしています。

 

「SEAoME」は,海洋数値モデルを使った海洋環境情報を提供するサービスです。
現在の海況の解析と、通常5日、最長で14日までの予測が可能です。
沿岸から外洋までのシームレスな情報を提供できるので、幅広い産業にとって有用なシステムとなっています。漁業以外にも、汚染物質・海ごみの漂流シミュレーションや環境評価などに利用できます。
パソコンなどのWeb画面から使用でき、専用の端末などは必要ありません。

 

もうひとつの「漁場ナビ」は、漁場を決める際に重要な海水温データを、1時間ごとに配信するサービスです。
気象衛星ひまわりが観測した海水温情報は雲に隠れて見えない部分がありますが、オーシャンアイズ独自のAIを用いて隠れた部分を解析し、、リアルタイムに近い頻度で、海洋地図上にわかりやすく温度別に色分けして表示します。

 

魚がいそうなスポットをピンポイントで予測できるため、移動距離を極力減らし、燃料コストも削減することができます。
もちろん移動にかかる時間も短縮できます。

 

操業履歴データをご提供いただける場合、オプションとして「漁師の勘」を再現する「漁場推定」サービスも個別にご案内することができます。

 

サービスは、アプリをあらかじめインストールしたタブレットをお渡ししてご利用いただいています。また、今後は、Webでの提供も視野に入れています。
アプリはクラウド管理のため、ユーザー側で更新やデータ同期の必要はありません。
なるべくシンプルに使いやすく設計しています。

 

非常に汎用性の高いシステムのようですが、漁業以外にも展開可能ではないでしょうか?

そうですね、実は漁業以外の業界の方からもいろいろなご相談をいただいています。
最近では、ケミカル系の業界からのご相談で、例えばタンカー事故などで石油が流出した際の対策として活用したいというご要望をいただきました。
石油が海上をどのように広がっていくのかを予測し、早期解決を図るためにご利用いただきたいと。
海面利用のさまざまな場面で利用可能性があるとご評価いただき、とてもうれしいですね。

 

現在「SEAoME」と「漁場ナビ」はどのようなユーザーが利用しているのですか?

実証を経て、どちらもまだできたばかりのシステムですが、「漁場ナビ」はβテストを漁師のみなさんや水産試験場にお願いしているところです。
年内にはテスト完了し、バージョンアップの上、商品化の予定です。

 

「SEAoME」はどちらかというと官公庁からの引き合いが目立ちますね。
その関係で、自治体の方から地元の漁師の方をご紹介いただいたりといったことも多いです。

 

現在、海洋系のメーカー、サービスプロバイダー、通信業者などの方と販売代理店交渉を進めています。
OEMや既存のシステムの組み込みも可能な柔軟性の高いサービスであることをPRし、今後はさらに販路を広げたいと思っています。

 

 

漁業エキスポで興味、ユーザーサイドに強い漁師コミュニティ

漁師コミュニティを知ったきっかけは何ですか?

2019年5月に神保町で開催された漁師エキスポがきっかけです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000037458.html
漁業や水産業関係者のコミュニティは、これまであまり聞いたことがなかったのでおもしろいなと思いました。

 

 

オーシャンアイズには、実は漁業の専門家はいないんです。
そのため漁業の現場とのネットワークがなく、漁師の方などと直接連絡をとれる場があまりありませんでした。
我々のシステムを実際の漁師の方に使ってもらいたいと思ったとき、テストをしてくださるユーザーを探そうにも、なかなか難しい状況でした。
そこで、ユーザーサイドに強い漁師コミュニティとマッチングできたことは、非常に心強かったですね。

 

共同で研究を行っていたJAMSTECは関東が拠点ですが、我々の拠点は京都。
地理的に西日本のユーザーを探していたので、漁師コミュニティがそのニーズも汲み取ってくれたのはありがたかったです。

 

漁師コミュニティやFOIPをご利用いただいた感想はいかがでしょうか?

一言でいうと、非常に意欲が高く熱心な方が多いことに驚きました。
「漁師コミュニティ」という新しいコンセプトのサービスなので、アーリーアダプターの方が多い印象です。
特に、先代を引き継がれた若手の方が多く、技能継承の重要性を感じていたのが特徴的だと思います。
先代に追いついて売上をあげたいという切実なニーズは、本当に真に迫るものを感じますね。

 

これまで、年配の漁業者の方や、地域で安定的な経営をされている老舗をご紹介いただくことが多かったので、正直なところ、そのギャップに驚いています。

 

8月7日に佐賀県で行った「漁場ナビ」の説明会では、その場で2名のテスト参加者が決定し、とても手ごたえを感じましたね。
オンライン上の「漁師コミュニティ」でもお問合せが多いと聞いていますので、非常にうれしく思っています。

 

 

手ごたえあるβテスト経て実装へ さらなるデータプラットフォーム目指す

改めて、今回のβテストの流れを教えて下さい。

今回の「漁場ナビ」のβテストでは、漁師の方に「漁場ナビ」をインストールしたタブレットを1週間ご利用いただきました。
その1週間の間に実際にご利用いただき、機能に問題がないか、利用することで燃料コストの削減など、操業効率化にどれだけ効果があったかをフィードバックしてもらいました。
株式会社Salt経由で、そのフィードバック結果をいただき、製品開発やバージョンアップに反映するという流れです。

 

βテストの協力者としては、沿岸漁業者の方を「漁師コミュニティ」に紹介してもらいました。
沿岸漁業をターゲットとした理由は2つ。
まず、日本の漁業者のうち沿岸漁業が最も多いからです。
現在の漁業人口のうち、半数以上が沿岸漁業ですからね。
もう1つの理由は、遠洋漁業は漁期が長くデータの回収が遅くなり、フィードバックを得にくいと判断したためです。
1年間漁に出て1週間陸に戻る、というスパンだとβテストには不向きだと考えました。

 

遠洋漁業に比べると、沿岸漁業や定置網、沖合漁業などは比較的フィードバックを得やすいと思います。

 

そういった細かなターゲットの特性も、「漁師コミュニティ」で指定いただけたのは大変助かりました。

 

βテストの結果はいかがでしたか?

ユーザーの方には、1週間の試用のあとに4,5枚のアンケートにご回答いただいたのですが、ほとんどの方から「潮流のデータがほしい」というご意見をいただきました。
網を入れるときなどの参考にしたいということでしたね。
海水温については、沿岸漁業ではそこまで参考にされていない様子でした。
これには少し驚きましたね。

 

総じて、実際の漁業者の方がどんな情報を欲しがっているのか、ニーズの濃淡を知ることができてとても有意義なβテストになったと思っています。

 

また、アプリの見やすさや使いやすさについても、多数のご意見をいただきました。
例えば、温度の単位や目盛りの表記などです。
細かいところですが、漁師の方が現場でパッと直感的に使えるインターフェースを目指すのに、非常に参考になるご意見だと思っています。

 

今後は、潮流予測などのデータを組み込んで、さらに漁獲向上に繋げたいと期待しています。
例えば定置網では、温度の予測によって魚が入っているかどうかの判断ができれば、効率化に繋がりますし、カゴ網漁では温度と漁獲量の相関に関する研究はできているので、あとはそれをどうユーザインターフェースに落とし込むかだと思っています。

 

今回のβテストの結果を踏まえ、もっと簡単に、あらゆる漁の方に使っていただける情報を提供できるようにしていきたいと思っています。
ありがたいことに、「漁場ナビ」にご期待を寄せているという応援のメッセージも多くいただきました。

 

オーシャンアイズのこれからの事業の展望についてお聞かせください。

まず、ユーザーとの協力体制を整えたいですね。
ユーザーとコミュニケーションをとり、様々なデータを集約して使える場を作りたいです。
データのプラットフォームのイメージです。

 

今の日本の漁業者のうち、半数以上が沿岸漁業者だといわれていますので、沿岸漁業に従事する方にたくさん使っていただきたいです。
そうすることで、より多くのデータを集積でき、さらに精度の高いシステムにブラッシュアップすることができます。

 

我々が着目しているのは、沿岸の漁師の方々が日々触れている環境に関するデータです。
漁獲データではなく、こうした気温や風況などの環境データを多くお寄せいただければ、システムをよりお安く提供できる可能性も高まるでしょう。

 

ユーザーの方々からのデータをシステムに反映するために、まずはデータプラットフォームを作ることが必要だと思っています。

 

その上で、漁師の方々が日々操業する中で取得する様々なデータを集積した、貴重な海洋データをもとに、さらにサービスを発展させていきたいですね。

 

 

「漁業×IT」は可能性大、FOIPを通して協業の輪広げたい

FOIPや漁師コミュニティに今後期待することは何でしょうか?

なんといってもβテストの継続ですね。
例えば、メーカーなどは自社の製品の分野には詳しいですが、逆にそれ以外の分野についてはそうでもない。
まして分野を横断的にカバーしているような会社はまだまだ少ないと思います。
その意味で漁師というユーザーサイドのチャネルは不足しているのが現状です。

 

ですので、「FOIP」「漁師コミュニティ」は全体的な漁師の方について、いろいろな傾向を知るために非常に有用だと思っています。
将来的には、データを使った漁業についての興味を、漁師のみなさんに持っていただける場として役立てたいとも考えています。

 

ありがとうございます。FOIPや漁師コミュニティでも、漁業の現場にテクノロジーを導入して、スマート水産・IT化に貢献したいと思っています。

水産業の将来にとって、データはとても重要です。
今でも、ひと昔前と比べると漁師の方はいろいろな情報機器を活用されるようになったと思います。
これからは、さらにその流れが加速するでしょう。

 

水産ITの分野においては、今は流通チャネルでの利用が一歩リードしている感がありますね。
今後は衛星を活用することで、沖合や遠洋における通信環境もより改善されるでしょうし、漁業の生産現場でのIT化もさらに進化することが予想されます。

 

FOIPを利用して、他社と協業したいと思われますか?

もちろん、様々な面で補完できることは十分あると思います。
例えば、データをAPIとして提供することなどは、考えやすい事例ですね。
「データを使ったら簡単にできることが、今はやれていない」というケースは実に多いので、ぜひ連携してひとつずつ改善していきたいと思います。

 

FOIPも学生起業家が在籍しているので、若い起業家にも期待したいですね。
京都大学も学生の起業が増えてきています。
京大ベンチャー企業のネットワークも提供できる可能性もありますし、「データを使って何か解決したい」というときは、ぜひオーシャンアイズにご相談ください。

 

株式会社オーシャンアイズのオープンイノベーション情報はこちら
https://foip.info/ocean-eyes/